高速なデジタル信号は0と1が高速に変化している。これは周波数が高いことに相当する。しかし、0と1のデータはランダムに発生するので、0がずっと続くような場面や1がずっと続くような場面があるといくら高速にデジタル信号を送っていても信号は変化しない。信号が変化しなければ、直流が出てくるだけである。それに対し、0と1が交互に現れるときには、信号は激しく変化するし、高速な信号になればなるほど信号の周波数は上がる。実際の信号は、ずっと0や1が続く場合と、0と1が交互に出てくる場合の間と考えられるので、結果として直流から高い周波数まで満遍なく周波数成分が現れることになる。この周波数の上限がデジタル信号の送出速度に比例している。この場合の帯域は0から上限の周波数までなので、高速なデジタル信号は広い帯域が必要になる。
デジタル信号を高い周波数に変換するときには、周波数領域での足し算が行われる。もし、デジタル信号が0〜100MHz(0.1GHz)の帯域だったときに、1GHzの信号で変調をかけると、1〜1.1GHzになる(注:数字は変調方式による)。つまり帯域はそのままで高い周波数に信号が移動するだけということになる。その結果、広い帯域を使える方が、高速なデジタル信号を送ることができるのである。
それではOFDMはどうなっているのだろうか。OFDMでは、ひとつのチャネルと呼ばれる領域あたり非常に狭い帯域の信号が用いられる。この狭い帯域では遅いデジタル信号しか送ることができない。しかし、チャネルを複数用いることにより、全体としてはデジタル送信の速度を上げることができるというわけである。
これは、1本の信号線でデジタル信号を送る場合と複数の信号線でデジタル信号を送る場合にたとえることができる。ある速度のデジタル信号を送るのに1本の信号線を用いると、非常に高速に変化するデジタル信号を送らなければいけなくなる。その結果、信号線に送られる信号の帯域は広くなる。一方、複数の信号線を用いる場合、一つ一つの信号線で送らなければならないデジタル信号はゆっくりでも良くなり、帯域を狭くすることができる。後者がOFDMでの信号の送り方というわけである。
もう少し、具体的な例を挙げてみよう。先の例では0〜100MHzのデジタル信号を送ることを考えたが、1/10の速度のデジタル信号では0〜10MHzの範囲でしか帯域は必要とされない。これを1GHzの信号で変調すると1〜1.01GHzとなる。別の10MHzの帯域を持つデジタル信号を1.01GHzの信号で変調すると1.01〜1.02GHzとなる。さらに10MHzの帯域を持つデジタル信号を1.02GHzの信号で変調すると1.02〜1.03GHzとなる。このような変調を10回行い、それらの信号を重ね合わせると、結果的に1〜1.1GHzの帯域で10MHz×10のデジタル信号を送ることができるようになるというわけである。
ということは、ひとつの広い帯域を用いても、複数の狭い帯域を用いても(OFDM方式)結果として同じ帯域が使われるのであれば、送ることができるのは同じ速度のデジタル信号になるように思われる。それでもOFDMの方が同じ帯域では送ることのできるデジタル信号の速度を高めることができると言われている。なぜか。
先に述べたようにデジタル信号はその信号の並び方によって周波数が変わる。単に周波数が変わるだけでなく、周波数によって微妙に進む速度が変わるので、ある距離を進めばデジタル信号のデータ列が前後で干渉するようになる。デジタル信号を送る速度が速くなればなるほど前後で干渉しやすくなる。逆にデジタル信号がゆっくり送られれば前後では干渉しにくくなる。OFDMでは、ひとつひとつのチャネルで送られるデジタル信号の速度は遅いので干渉はしづらくなるというわけだ。
データが前後で干渉しづらくなると、結果的にはデータを送る速度を上げる余地が出てくるということになる。
計算能力の高いひとりの天才は病弱で休みがち、その結果計算を全部終えるのに時間がかかるが、ゆっくり計算する100人の凡人は健康優良で、想定される納期できっちり計算を終えることができる。この後者の100人の凡人がOFDMというわけである。
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